1985年4月、ソニーの新入社員だった私は、本社で行われた入社式で創業者の盛田昭夫さんのスピーチを聞いていた。彼はこう言った。
…ソニーが自分に合わないと感じたら、すぐに辞めてください。
まだ終身雇用が当たり前だった時代。それにもかかわらず、新入社員の門出を祝う席でのこの発言にはドキッとした。実は、入社式では毎年そう言っていたらしい。
そのまま私は本社から遠く離れた厚木の事業所に配属になったこともあり、まさか数年後に、実際に盛田会長に直接商品のプレゼンテーションをする機会が訪れるとは予想もしていなかった。
詳しくは別の機会に書くことにするが、ちょっとしたミラクルがあり、私は厚木から本社への異動に成功する。そして、ウォークマンなど、その当時の花形商品を扱う事業部の商品企画部門に配属された。
ソニーは、テープレコーダーで始まった会社でもあるので、主力ビジネスが映像機器やデジタル機器に移ってきていた80年代後半においても、盛田会長はアナログ録音機器に常に関心を持たれていた。今は取材や会議の録音にはICレコーダーを使うが、当時はまだアナログカセットの録音機が主流で、ビジネスとしても結構大きかった。
そんなわけである日、会長室に新商品の試作機のプレゼンテーションに行くことになる。
たった30分くらいだったと思うが、あのとき感じたオーラを今でも忘れない。

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恵比寿UX代表・山田勲Twitter@ebisuux