中学の国語の教科書は、たとえば「夕鶴」「高瀬舟」「枕草子」などの定番作品を含みながら、科学技術に関する文章がひとつくらいは掲載されている。

1998年から2001年まで使われた教科書に寄稿した「0と1の世界」が、その「科学エッセイ」の役割を果たしていたもので、このnoteを書くまでは、私が自分の名前を使って世に出した最後の著述だった。

理科の教科書ではなく、国語の教科書で、数ページで「デジタルとは何か」を解説するというチャレンジングな企画。退屈な文章を書きたくはなかったが、文部省(現在の文部科学省)の検定を通す必要があり、あまりふざけた書き方もできない。実際、第1稿は「横浜の中華街で食事をしていたときのことである」という、ちょっと意外な始まり方をするもので、自分ではかなり気に入ったものだった。そこから、日本と中国で使われている「漢字」に着目し、デジタル技術があって初めてあれだけの文字情報を電子化できるようになった、という流れになっていた。しかし、あまり適切でないアプローチであると判断され、その案は却下された。

それでは、ということで思いついたのが、教科書の冒頭についている「口絵」というカラーページの活用である。生徒は小さいころからテレビゲームをやった子たちだろうから、デジタルっぽいギザギザした画像を載せて、視覚的にデジタルの概念を伝えようとするアイデアだった。

そこで「この人しかいない」と頭に浮かんだ女性がいた。私が知りうる限りで、最強のグラフィックデザイナーだ。実際に彼女がコンピュータで作成してくれたこのリンゴの絵2枚は、一目でデジタルの概念を伝えうるものだった。

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恵比寿UX代表・山田勲Twitter@ebisuux