ふむふむ、キミが新しくADになったやまだくんだね。

最初っから何かやらせてもらえると思ったら大間違いだよ。

これからしばらくキミは音楽的発言は一切しちゃいかん。

若いディレクターが音楽的な知識もあまりないくせにスタジオでアレンジに対する提案とか言ったりすると、ほかのプロの人に失礼だとか、そういうことじゃないんだよ。

万が一それがいいアイデアで採用されちゃったりするのが一番よくない。

いいか、このアルバムはオレの責任で制作してるんだ。

売れても売れなくてもオレの責任だ。

キミにはまだその責任はないし、自分の意見が一度くらい採用されただけで、いい気になって制作チームの輪の中に入ってしまうのがよくない。

キミはオレのやり方を横で客観的に見て、いいも悪いも、観察し続けろ。

アーティストがどういう発言をするか、ひとりひとりの意見の違いは何か、オレやエンジニアがアーティストの意見にどう反応するかをつぶさに見て、今、何が行われているのかを何しろ見届けろ。

最初っから、その輪の中に入ってしまうと「見る」ってことができなくなるからな。

それで、ああ、このやり方はまずいな、とか、無駄な時間使ってるな、と思っても、それは言わずにちゃんとメモしておけ。

ただし、暗い顔はするなよ。

キミをそこに座らせといて、スタジオ内のムードが悪くなっちゃ最悪だからな。

「なんだ、あの暗いヤツ」とか思われたらこの業界はオシマイだ。

わかったな。

もう一度言うが、当分キミにはクリエイティブなことは何もやらせない。

そのかわり、がんばれば本当にやらせて貰えるときが来る。

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恵比寿UX代表・山田勲Twitter@ebisuux